生活習慣病

生活習慣病について

生活習慣に関係のある慢性疾患で、互いに密接に関連し合っています。以下の疾患に対して、生活習慣改善の指導とともに薬物療法(内服治療)を行っております。

生活習慣病の主な病気

高血圧

診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、または家庭で測定した血圧が135/85mmHgを超えた高い状態を高血圧と言います。日本では、およそ4300万人が高血圧と推定され、年間約10万人以上の人が高血圧によって亡くなっています。

年齢や疾患によって目標血圧は異なりますが、日本では血圧基準として日本高血圧学会によって「高血圧治療ガイドライン」にまとめられています。高血圧が気になる方は、一度当院にご相談ください。

血圧値の分類(成人血圧・単位はmmHg)(高血圧治療ガイドライン2019より)
分類 診察室血圧 家庭血圧
収縮期血圧 拡張期血圧 収縮期血圧 拡張期血圧
正常血圧 <120かつ<80 <115かつ<75
正常高値血圧 120-129かつ<80 115-124かつ<75
高値血圧 130-139かつ/または80-89 125-134かつ/または75-84
Ⅰ度高血圧 140-159かつ/または90-99 135-144かつ/または85-89
Ⅱ度高血圧 160-179かつ/または100-109 145-159かつ/または90-99
Ⅲ度高血圧 ≧180かつ/または≧110 ≧160かつ/または≧100
(孤立性)
収縮期高血圧
≧140かつ<90 ≧135かつ<85

※血圧の測定は、時間をあけたり、別の日に測定するなど1回の測定だけではなく、2回測ってその平均値を採用して判定していきます。
※収縮期血圧(上の血圧)/拡張期血圧(下の血圧)のどちらかが、140/90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます(診察室で測定した場合)。
※家庭血圧で測定する場合は、5日程度測定してその平均が135/85mmHg以上の場合に高血圧となります。

高血圧の原因

高血圧は、加齢や生活習慣、遺伝的な要因からなる本態性高血圧と、なんらかの疾患が原因となる二次性高血圧とに分類されます。高血圧は、これらの原因を特定し、適切に対処していくことで血圧を正常値に戻すことが可能です。高血圧の原因は、以下の通りです。

  • ①塩分の過剰摂取などの食生活
  • ②親が高血圧など遺伝的要因
  • ③肥満やメタボリックシンドロームなどの生活習慣
  • ④ほかの疾患(腎臓や副腎の機能障害)
高血圧を放置すると

高血圧をそのまま放置することで動脈硬化を引き起こし、脳卒中、心筋梗塞、腎臓病など重篤な病気を起こす恐れがあります。気付かないうちに病気が進行し、これらの合併症を招く場合があるので注意が必要です。

高血圧の検査と診断

当院では、高血圧の原因を特定するための検査と診断を行っています。

  • 医師による問診及び視診
  • 血圧測定
  • 一般採血、特殊採血
  • 尿検査(糖・蛋白・ウロビリノーゲン・潜血・ケトン体・細菌・白血球数)
高血圧の治療について

①食事療法
基本的に、塩分を控える、飲酒を控えることが食事療法の中心です。そのほか食事で気を付けたい点は、以下の通りです。

  • 減塩調味料を使用
  • 外食や加工食品を使用しない
  • 過食や間食を防止する
  • 麺類の汁は残す
  • むやみに調味料を追加しない

②運動療法
肥満解消のために、日常生活の中で可能な限り歩きましょう。なるべく歩く、階段をのぼるなど、身体を動かす習慣をつけることが大切です。食事療法と運動療法を上手に組み合わせて、BMIを正常範囲の18.5~25(kg/m2)になるように取り組みます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

③薬物療法
食事療法と運動療法を行っても十分な効果が得られない場合には、降圧薬を用いて血圧をコントロールします。医師の指示に従って、用量と回数を守って内服します。患者さんの全身の状態や血圧値、他の疾患の有無によって最適な薬を処方しています。

降圧薬について

治療薬 治療効果
カルシウム拮抗薬 血管を広げ血圧を下げます。
ARB・ACE阻害薬 血管を収縮させる体内の物質を抑制し血圧を下げます。
利尿薬 血管から食塩と水分(血流量)を抜いて血圧を下げます。
β遮断薬 心臓の過剰な働きを抑えて血圧を下げます。

薬の副作用について
高血圧の治療における薬は、長期服用しても安全面に優れています。しかし、どのような薬でも多少の副作用があるので、万が一副作用がある場合は、すぐにご相談ください。治療薬と起こり得る副作用は、以下の通りです。

治療薬 副作用
カルシウム拮抗薬 動悸、顔のほてり、足のむくみ、歯茎の腫れ
ARB 高カリウム血症など
ACE阻害薬 咳、血管浮腫、高カリウム血症など
利尿薬 高尿酸血症、低カリウム血症、日光過敏症など
β遮断薬 呼吸器疾患の悪化、糖脂質代謝異常など

降圧薬はやめられる?
降圧薬は、高血圧を根本から治す薬ではありません。ずっと飲み続けなければいけないの?という疑問があると思いますが、減らしていくことはできます。服用をやめると元に戻ってしまう可能性が高いですが、食事療法と運動療法によって生活習慣を改善することで、徐々に薬を減らすことが可能です。気を付けなければいけないのは、自己判断で薬を減量したり、中止したりすることは危険なのでやめましょう。必ず、医師に相談しながら治療を進めてください。

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症とは

血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂肪分が多過ぎたり、少なすぎたりする状態を脂質異常症と言います。従来の高脂血症と呼ばれる病態も脂質異常症の一部です。
血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)・善玉コレステロール(HDLコレステロール・中性脂肪(トリグリセリド)の数値に異常がある状態です。中性脂肪やLDLコレステロールが基準より高くすぎても、逆にHDLコレステロール値が低すぎても、動脈硬化を引き起こしてしまいます。
脂質異常症は、動脈硬化を進行させるリスクがあり、そのまま放置してしまうと脳梗塞や心筋梗塞、狭心症などを発症する恐れがあります。日本では、220万5000人が診断されていて、女性の方が男性よりも2.4倍多いと報告されています。脂質異常症は自覚症状がないため、早期発見するためにも定期健診を受けることをおすすめしています。

動脈硬化の発生と進行

健康な血管に喫煙や肥満などを原因としてプラークが発生します。プラークが発生した血管は、内壁が狭くなり血流が悪くなり血栓ができてしまいます。血管が血栓によって塞がり、動脈硬化が発生します。

脂質異常症の原因

主な原因は、食生活とされています。カロリーの高い動物性脂質の多い食事によって、血中のLDLコレステロール値や中性脂肪を増加させます。肥満や運動不足、アルコール過剰摂取、喫煙、遺伝的要因などによって脂質異常症が引き起こるとされています。

診断と検査

脂質異常症の診断は以下の通りです。まずは、血液検査を実施します。

  • LDLコレステロール 140mg/dl以上:高LDLコレステロール血症
  • HDLコレステロール 40mg/dl未満:低HDLコレステロール血症
  • トリグリセリド(TG)150mg/dl以上:高トリグリセリド血症

脂質異常症と診断された場合は、その原因を把握するために以下の検査を行います。
  • 医師による問診・視診(既往歴、家族の病歴、生活習慣について)
  • 血圧測定
  • 特殊採血
  • 尿検査(迅速検査:糖、蛋白、ウロビリノーゲン、潜血、ケトン体、細菌、白血球数)
※動脈硬化の進行を診るために、心電図検査・超音波エコー検査を行う場合があります。
注意したい脂質異常症

①原発性高脂血症
冠動脈疾患の発症頻度が非常に高いことから、原発性高脂血症の診断は重要です。とくに、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体は、遺伝性が高く、およそ500人に1人という高確率で発症しています。

②続発性(二次性)高脂血症
ほかの疾患や薬が原因となって起こる高脂血症で、甲状腺機能低下症による高LDL‐C血症を見逃さないように注意します。

脂質異常症の治療

検査結果をもとに、患者さんのリスク評価と原因を把握し、治療方針を決めていきます。ほかの疾患が原因で脂質異常症になっている場合は、もとの疾患の治療を行います。治療の基本は、生活習慣の改善と禁煙、適正体重の維持です。

①リスク評価を行う

  • 冠動脈疾患の既往歴及び家族歴があるかどうか
  • 高血圧・糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患・非心原性脳梗塞があるかどうか
  • 年齢・性別・喫煙・血清コレステロールを評価する

②管理目標値を決める
管理目標値を決めて目指します。

低リスクの方 LDLコレステロール<160mg/dl
HDLコレステロール≧40mg/dl
中リスクの方 LDLコレステロール<140mg/dl
HDLコレステロール≧40mg/dl
高リスクの方 LDLコレステロール<120mg/dl
HDLコレステロール≧40mg/dl
冠動脈疾患の既往のある方 LDLコレステロール<100mg/dl
HDLコレステロール≧40mg/dl
トリグリセリド(TG) 一律150mg/dl未満

③食事療法
それぞれ脂質異常症のリスクに応じて食事内容を改善していきます。

・高LDL‐C血症
控えるもの:肉類の脂身・内臓・皮・乳製品・卵黄・菓子類・加工食品
増やしたいもの:未精製穀類(食物繊維と植物ステロールを含むもの)・大豆製品・野菜・海藻類

・高TG血症
控えるもの:菓子類・糖類・飲料・穀類・アルコール・禁煙する
増したいもの:ω(オメガ)-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚(イワシ・サンマ)

・低HDL‐C血症
控えるもの:菓子類・加工食品・植物油(ω(オメガ)‐6系多価不飽和脂肪酸の摂取を減らす)

④運動療法
スロージョギングや速歩・水泳・サイクリングなどがおすすめです。頻度は、1日30分以上を目安に6日/週程度。これまでに運動する習慣がなかった方も毎日30分以上軽く運動するところからスタートしてみてください。徐々に時間を増やしたり、種類を増やしたり進めていくことがおすすめです。

⑤薬物療法
以下の場合には、薬物療法を検討していきます。

  • 食事療法や運動療法を行っても脂質異常の症状が改善されない。
  • 糖尿病や慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患がある。
  • LDL‐Cが180㎎/dl以上を維持している。

薬物療法は、患者さんの症状や状態によって処方薬が異なります。使用する薬剤はすべて長期治療実績がある薬ですが、どの薬にも多少の副作用があります。薬物療法を進めるなかで、万が一副作用があった場合は、すぐに当院にご相談ください。 脂質異常症治療薬の特性と注意すべき副作用については以下の通りです。
分類 特性 副作用
LDL-C non HDL-C TG HDL-C
スタチン ↓↓↓ 横紋筋融解症、筋肉痛や脱力感などミオパチー様症状、肝障害、認知機能障害、空腹時血糖値およびHbA1c値の上昇、間質性肺炎など
陰イオン交換樹脂 ↓↓ 消化器症状、脂溶性ビタミンの吸収障害、ジギタリス、ワルファリンとの併用ではそれら薬剤の薬効を減ずることがあるので注意が必要である。
小腸コレステロール
トランスポーター阻害薬
↓↓ 消化器症状、肝障害、CK上昇
フィブラート ↓↓↓ ↑↑ 横紋筋融解症、肝障害など
ニコチン酸誘導体 ↓↓ 顔面潮紅や頭痛など
※日本人では多いといわれているが、慣れの現象があり、少量から開始し、増するか、アスピリンを併用することで解決できる。
プロブコール - ↓↓ 可逆性のQT延長や消化器症状など
多個不飽和脂肪酸 - - 消化器症状、出血傾向や発疹など

健康診断などで脂質異常症を指摘された場合、コレステロール値が高かった場合などは、早めに医療機関を受診して治療を行い、予防されることをおすすめしています。

糖尿病

糖尿病とは

糖尿病慢性的に血糖値が高くなる病気が糖尿病です。食事をすると血糖値が上がります。これは、食事で取り込んだ糖分が消化され、ブドウ糖になって血液によって全身に運ばれてエネルギーとなります。このように、血糖値が上昇すると膵臓からインスリンを分泌し、筋肉や臓器ではグリコーゲンというエネルギーとして取り込まれます。それと同時に、脂肪組織では脂肪として蓄えます。血液中の血糖を素早く処理して、血糖濃度を一定に保つインスリンの働きによって、飲食しても一定の血糖値が保たれています。

しかし、何らかの原因によってインスリンの働きに支障をきたし、血液中のブドウ糖をスムーズに処理しきれず、血糖値が高い状態が続くのが糖尿病です。長期にわたりこの状態が続くと、全身の血管に障害が起こり、重症化してしまいます。腎不全や失明・足の切断など、生活の質を大きく低下させる合併症を引き起こすことになります。

糖尿病は、その原因によって1型・2型に分類されます。
1型:ほかの疾患が原因で発症します。膵臓の働きが弱まり、インスリンを作り出すβ細胞が破壊されてインスリンが出なくなって起こる糖尿病です。
2型:食習慣や運動不足、ストレス、加齢などが原因で起こる糖尿病です。とくに、炭水化物や脂質の摂り過ぎには要注意です。日本人はインスリンの分泌機能が弱いとされているため、成人糖尿病のおよそ9割の患者さんが2型の糖尿病と報告があります。

糖尿病ではHbA1c・血糖値が高い

日本国内において、糖尿病の患者さんはおよそ720万人いるとされています(平成26年度調査)。糖尿病は、初期症状がほとんどなく、病気が徐々に進行していき、気付いたときには重篤な合併症を引き起こすほど進んでいるケースが多くみられます。このように、糖尿病は早期発見、早期治療が重要です。健康診断でHbA1c数値が高いと言われたら、早めに当院にご相談ください。

HbA1cについて

糖尿病リスクを判別する数値で、呼び方はヘモグロビン・エー・ワン・シーです。健康診断の検査項目の1つにあるので、診断を受けたら糖尿病リスクの程度が分かります。ヘモグロビンは、血液中の赤血球を構成していて、肺で酸素を受け取り全身に運ぶ役割を担っています。ヘモグロビンは、血液中の糖分と結び付きやすく、なかでもブドウ糖と結合したものをHbA1cと言います。

血糖値と違う点

糖尿病検査では、血糖値の数値を測定しますが、HbA1c数値と血糖値では違いがあります。血糖値は、直近の食事内容や運動量によって即数値が上昇したり、下降したりするので検査の測定のタイミングによって数値に大きな差が生じてしまいます。一方、HbA1cの数値は、採血時から1~2カ月ほど経つ間の平均的な血糖状態を示す数値とされています。したがって、食事や運動に関係なく、血糖値の平均値と相関しています。

HbA1cの正常な数値とは

年齢や性別によりますが、HbA1c数値が6.5%以上の場合、糖尿病の可能性があるため、より精密な検査が必要です。一般的に、正常値は5.5%未満とされています。糖尿病と診断された場合、治療目標としてHbA1c数値を7.0%未満にコントロールしていきます。

HbA1c数値が高いと疑われるほかの疾患

HbA1c数値が高い糖尿病以外にも、腎不全や甲状腺機能亢進症、異常ヘモグロビン症などが挙げられます。

糖尿病の症状と三大合併症

糖尿病の三大合併症と言われるのが、糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害とされています。糖尿病の初期は、自覚症状がほとんどないため、なかなか初期に気付くことが難しく、気付いたときには病気が進行している場合が多くあります。症状として、尿に糖が混ざって出される、さらに進行するとトイレの回数が増え、喉が渇くため水分を多く摂るようになります。私たちが活動する際には、糖をエネルギーにして活動します。しかし、糖尿病になると、糖は尿と一緒に排出されてしまうため、たんぱく質や脂肪をエネルギーにして活動します。そのため、身体が疲れやすく、体重が減るなどの症状が目立つようになります。病気がさらに進行すると、血中の糖が増加し、全身の毛細血管を傷つけてしまい合併症を引き起こす恐れがあります。

①糖尿病網膜症
眼の網膜の血管は非常に細かいため、高血糖が続くと網膜の毛細血管が損傷します。血管が詰まって変形したり、出血したりします。これを糖尿病網膜症と言い、さらに病気が進行すると網膜剥離を引き起こします。重篤な場合は失明に至る恐れがあるので注意が必要です。

②糖尿病腎症
高血糖になり、全身の動脈硬化が進行すると、腎臓の毛細血管が詰まったり、破れたりして老廃物をろ過する機能に支障が現れます。この状態を糖尿病腎症といいます。さらに病気が進行すると、慢性的な腎不全を起こし、透析治療が必要になってしまいます。

③糖尿病神経障害
高血糖が続くと、ソルビトールが蓄積し、神経細胞に障害を及ぼします。神経細胞がダメージを受けると、足の指や裏に痛みやしびれの症状が現れ、さらに進行すると神経感覚が鈍くなり、痛みやしびれの感覚がなくなります。この状態を糖尿病神経障害と言います。

糖尿病の治療方法

糖尿病になってしまうと完全に治す方法がなく、その治療目的は血糖値をコントロールし、合併症を抑えること、健康寿命を延ばすこととなります。患者さんの年齢や身体の状態、認知機能などに応じて、個別に目標数値を設定して治療を進めていきます。

①薬物治療
薬物療法にて血糖値をコントロールしていきます。

②食事療法・運動療法
糖の吸収を遅らせる、或いは血糖値を下げる食材を摂るようにします。なかでも食物繊維が糖質の吸収を遅らせる働きがあります。食物繊維を食事の最初にとったり、炭水化物などの糖質の量を減らしていきます。また、脂質異常や動脈硬化リスクが高い肉類などの脂質を控え、血糖値を下げるとされる青魚を積極的にとります。高血圧の原因となる塩分も控えましょう。

運動すると、糖をエネルギーとして消費するため血糖値が下がります。とくに、2型糖尿病の場合、運動療法が非常に効果的です。なかでも、ウォーキングやランニング、水泳などの有酸素運動が必要です。突発的ではなく、運動を習慣化できるように継続していきます。運動の継続で、インスリンの働きが良くなり、血糖値コントロールも行いやすいとされています。

高尿酸血症・痛風

日本において、高尿酸血症の患者数がおよそ30万~60万人で、年々増加傾向とされています。高尿酸血症・痛風はこれまで50歳以上の高年層に多いとされていましたが、昨今では若年化し30歳代から発症する人が増えてきています。(日本痛風・核酸代謝学会 治療ガイドライン参照)

尿酸値が高いとは

体内の尿酸量が増えた状態を、高尿酸血症と言います。1日に生成される尿酸の量は700㎎です。正常な方であれば、体内の尿酸が1日に排出される量も700㎎で一定に保たれています。尿酸とは、体内のプリン体が分解されてできる物質です。常に体内で生成される物質で、私たちが臓器を動かしたり、運動する際のエネルギー源の役割を担っています。主に肝臓でプリン体が分解されて尿酸となり、体内に一時ため込まれた後に尿や便として排出されます。このサイクルが、食べ過ぎや飲みすぎで乱れると体内の尿酸量が増えてしまいます。これを高尿酸血症と言います。

尿酸値が高いと痛風になる

通常、尿酸は通常血液中に溶けた状態ですが、血中の尿酸量が増えてしまうと血中に溶けきらず結晶化してしまいます。結晶化したものが関節に溜まり、この尿酸血症の一部が関節液中に剥がれ落ちると、白血球が除外しようと炎症を起こす物質を発生させます。これが痛風を引き起こします。

痛風は、足の親指の付け根をはじめとする関節の1カ所が腫れ、激しい痛みが伴います。場合によっては、歩行が困難になるほどの酷い痛みがあります。痛風の発作が起きると、そのあとの24時間が痛みのピークとなり、3~5日ほどで和らぎ、次第に歩けるようになります。

痛風発作を起こしやすい方とは
  • お酒が好きでたくさん飲む方
  • 糖分の多い清涼飲料水を頻繁に飲む方
  • 過度にストレスを抱えている方
  • 激しい運動をしてる方
  • 水分をあまり摂らない方
  • 親族に痛風患者がいる方

以上のような方は、痛風の発作に注意が必要です。
尿酸値の検査

尿酸値の数値は、健康診断などで血液検査を行うと分かります。

血液中の尿酸値について
血液中の尿酸値
(単位:mg/dL)
対応の目安
<7.0 正常
<8.0 生活習慣の改善をする
<9.0 専門医に受診と生活習慣の改善をする
≧9.0 専門医に受診し治療開始する

尿酸値が>7.0㎎/dlの場合は、早めに当院を受診してください。尿酸値について、改善方法などをご説明しています。
治療方法について

痛風・高尿酸血症は、プリン体を控えることで症状を改善していきます。これまでの生活習慣の改善を行います。

食事療法
プリン体が多く含まれる食品や高カロリーの食材を控えます。
プリン体が多く含まれる食品:主に肉類・魚類とその内臓・アルコール(特にビール)

運動療法
肥満は、血中尿酸値を高めるとされているため、BMIを<25以下にするように運動していきます。

薬物療法
食事療法や運動療法を行っても、十分な効果が得られない場合、尿酸値がすでに一定値を超えてしまっている場合は、薬物療法を検討します。尿酸値を下げる薬は、尿酸の排出を促す「尿酸排泄促進薬」と、体内で尿酸生成を抑える「尿酸生成抑制薬」の2種類があります。

高尿酸血症のタイプ 尿酸排泄低下型 尿酸産生過剰型
薬の種類 尿酸排泄促進薬 尿酸生成抑制薬
一般薬剤名 ベンズブロマロン、
プロベネシド
フェブキソスタット、
アロプリノール
痛風発作を発症している場合

炎症や痛み、熱の症状を抑えるために、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を用いて治療していきます。また、痛風発作前の違和感がある場合は、コルヒチンという薬を使用することがあります。

痛風・高尿酸血症の予防について
  • プリン体の摂取を控える・プリン体を多く含む食品を把握する
  • アルコールを飲み過ぎない
  • 適正体重を維持する
  • 水分摂取を積極的に行う・水やお茶、野菜など(1日2リットルを目安に)
  • 有酸素運動を行う(週3回程度を目安に)
  • 過度なストレスを避ける・ストレスを溜めない
  • 健康診断を定期的に受ける

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)は、内臓脂肪型肥満と、 高血圧・高血糖・脂質異常のいずれか二つ以上を同時に発症した疾患です。 メタボリックシンドロームを放置すると、動脈硬化につながるリスクが非常に高くなります。基礎疾患の治療に加え、生活習慣改善の指導を行っております。

動脈硬化

動脈硬化とは

血管の内側にコレステロールなどが付着することで血管が狭くなったり、硬くなったり、もろくなったりして血流が悪くなる状態を動脈硬化と言います。動脈は、心臓から全身に血液を送り出している血管です。血管の内側に付着したプラークが徐々に大きくなると、血管狭窄や閉塞を起こしてしまい、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、下肢閉塞性動脈硬化症などを引き起こします。動脈硬化は、自覚症状がほとんどないまま進行してしまう特徴があり、心臓に大きな負担をかけ続けます。高血圧や脂質異常症など、生活習慣病がある方は、動脈硬化が進みやすいので注意が必要です。

動脈硬化の原因

食生活の乱れや運動不足、睡眠不足などの生活習慣をはじめ、加齢、肥満、喫煙、ストレス、生活習慣病などが大きな原因とされています。動脈硬化の因子が増えると、発症及び進行しやすくなります。加齢をのぞき、生活習慣などのコントロールによって症状を改善することが可能です。

主な原因
・高血圧
・脂質異常症(高脂血症)
・糖尿病
・食生活
・運動不足
・ストレス
・肥満
・喫煙

動脈硬化の検査

●超音波検査
当院では、以下のような超音波検査を行い、血管の状態を確認しています。

・頸動脈超音波検査
首に超音波を当てて、頸動脈に動脈硬化が起きてないかを検査します。脳梗塞予防のために、頸動脈狭窄を早期発見することは非常に重要です。リアルタイム画像で血管壁の厚さや血流の状態をチェックできます。

・下肢動脈超音波検査
足の動脈に狭窄や閉塞がないかを診ていきます。

※MRI検査で造影剤を使用せず下肢動脈を描出し、血管に異常がないかを診断する方法もあります。

動脈硬化の治療

生活習慣病がある場合は、その疾患の治療を行い、動脈硬化の進行を抑えます。これ以上生活習慣病が進行しないように、または発症しないように改善していきます。こうして、血管への負担を軽減させ、動脈硬化の進行や発症を抑制します。生活習慣病ではない場合でも、生活習慣に気を付け、改善することで動脈硬化を防ぎます。

①食事療法
野菜や海藻、青魚を積極的に摂るようにし、栄養バランスの取れた食事と適切なカロリー制限を行います。

②運動療法
少し早めに歩く散歩や軽い有酸素運動を習慣付けます。運動を行うことで、血行促進し、筋肉が付くので代謝が良くなり太りにくくなります。継続的に運動することで、肥満解消にもなり、善玉コレステロールを増やすことができるとされています。

③薬物療法
食事療法と運動療法で生活習慣の改善を図っても十分な効果が得られない場合、治療薬を服用する薬物療法を行います。高血圧・脂質異常症・糖尿病・閉塞性動脈硬化症などの薬を処方します。医師の指示に従い、治療薬によって適切なコントロールを行い、動脈硬化を進行させないようにします。

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